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ヨーロッパで、オーガニックライフといえば、”ヴェレダ”という名を耳にしないことはないだろう。1922年の創設以来、自然化粧品・健康食品・医薬品を製造開発を通して、人々に自然と調和した生き方を提案してきたヴェレダ社は、ヨーロッパをはじめ世界40ヶ国に拠点を置くナチュラルブランド。本拠地のあるスイス国内では、ほとんどすべての薬局やドラッグストアで取り扱われており、最も信頼できる自然派メーカーとして知られています。
今回は、ヴェレダ化粧品研究開発責任者である野中博士に、自然と調和して生きることの大切さ、そして、誰もが持つ”オリジナルな美しさ”の引き出し方についてお話をおうかがいしました。
木村: 野中博士にお会いして少し驚きました。大変勝手ながら、きっとドイツ人の博士がお越しになるのだろう・・・と。(笑)まさか、日本人の方だとは思っていませんでした。野中博士とヴェレダとの出会いについてお聞かせいただけますか?
野中博士: ヴェレダとの出会いは本当に古いんですよ。1973年ごろですかね。私が学生をしている時に、夏期休暇の期間中、アルバイトをしていたのがヴェレダだったのです。そこで、どの方からも温かく迎え入れてもらえたことが、大変印象的でした。
ヴェレダというところは、どういうわけか外国人が多く、化粧品の研究開発をしている私は日本人だし、アンプルの主任がロシア人、薬品開発の主任はデンマーク人、ドイツヴェレダ者の社長がオランダ人・・・・と、当時からこういった気風は変わらず、インターナショナルで、自由でフラットな考え方を持っている会社だったのです。
途中で奨学金をもらって、もう働く必要はなくなったのですが、結局4年間のアルバイトを続けました。毎年、夏にヴェレダに行くのが楽しみになっていましたから(笑)その後、博士論文や研究に追われヴェレダとは疎遠になっていましたが、1984年に正式に入社し、「帰ってきたね。」という雰囲気の中で迎えられて、なんだか嬉しかったですね。そういった土台がありましたし、会社の中の社風というものがあっていたのだと思います。
木村: ヴェレダと博士とは、深い絆で結ばれていたのかもしれませんね。ヴェレダには外国の方が多いというお話でしたが、環境や文化、思想などの違う人々が集まってひとつの物を作り上げていくには、会社としての理念や哲学といったものがより一層大切になってくるかと思います。もともとヴェレダは、哲学者シュタイナーの提唱した人智学(アントロポゾフィー)に基づいて設立されたと聞きましたが、そういった背景がグローバルな仕事環境を生んでいるのではないでしょうか?
野中博士: そうですね。研究・開発に携わる人達、全てに言えることですが、底辺に人智学(アントロポゾフィー)というものがあります。科学的なデータだけにとらわれずに、もう少し幅広い考え方で思考の輪を広げていこうと。そういった雰囲気の中で、製品開発が行なわれます。薬剤師、医者、治療師、マーケッター、製造、マネージメントなど、様々なバックグラウンドを持った専門家が協力して、違った方面からディスカッションしていく姿勢というのは、お互いにインスピレーションを受けることにもつながり、大変勉強になります。そういう意味で、ヴェレダというところは、総合的に物作りをしている会社だと思いますよ。
木村: 商品の開発というよりは、生命を注ぎ込んでいく作業のような印象を受けます。大変時間がかかり、骨の折れる仕事のようにも感じますが、そういった徹底した研究開発の姿勢というのが、ヴェレダと他の自然派化粧品との違いを生んでいるのですね。
野中博士: ナチュラルコスメの製造には、ものすごく時間がかかるのです。化粧品というものは、企画、製造、販売まで1年で行なうというのが一般的なのですが、ヴェレダの場合、開発に4〜5年をかけることはザラです。いえ、なにもサボっているわけではないんですよ(笑)できるだけ早く仕上げようとしているのですが、「難しいことを要求しているのだから、時間がかかって当然だ。」ということで、良いものを作るためであれば待ってくれるという社風があります。
オーガニックコスメ、ナチュラルコスメ、といったものには、さしたる定義があるわけではありません。例えば、カレンドラエキスを製品に一滴入れたものであっても、100%カレンドラのエキスで出来た製品であっても、市場では同じくナチュラルコスメとして扱われます。
しかし、これでは問題だろうということで、ドイツでは、ヴェレダを含む20社のナチュラルコスメメーカーが、BDIH(http://www.kontrollierte-naturkosmetik.de/)というグループを組織し、そこでオーガニックコスメの条件というものを設定しています。BDIHが認めた製造法、防腐剤などの条件下で作られた製品には、認定のシールが与えられるのですが、ヴェレダの場合は、BDIHで定められた条件より、さらに厳しい条件を設け、より高品質なものを目指すことを自らに課しているのです。とくに防腐剤については、BDIHでは4種を配合することが認められていますが、ヴェレダは同意していません。防腐剤を使わず、天然のものだけを利用します。その結果、製品開発に、4年も5年もの歳月がかかってしまうのです。
木村: ヴェレダ商品には、合成の保存料や着色料のほか、鉱物油、香料が一切使われていないので、私の周りでも、敏感肌の方を中心に愛用者が多いです。中には、「もう、他の化粧品には浮気できない!」といった人も。(笑)徹底した品質へのこだわりが、安全性と品質の高さを生んでいるのですね。
「自然と人間が調和して生きる」という言葉が、ヴェレダのスローガンとなっているようですが、それはどういった生き方や考え方なのでしょうか?
野中博士: 自然と調和を図るということが大切です。エーデルワイスのように、絶滅の危機にさらされているハーブがあります。こういった植物を摘み取ってしまうと自然のサイクルが、当然ながら壊れてしまいます。人間が採取しすぎて、ある種を絶滅に導くのは、もってのほか。しかし、自然を破壊しないで、これらのハーブを利用する方法があります。それは”栽培”という行為です。原料となるハーブは、自社農園で栽培したもの、あるいは私達の考え方に賛同する栽培園からのものを使用しています。自然を壊さず、大切にすることが大切だと考えています。
ヴェレダは、環境問題にも積極的に取り組んでおり、2002年には雑誌「Capital」(ドイツのビジネス金融誌)と環境団体「WWF」(Word Wide Fund For Nature)から、中企業部門で環境賞を与えられました。
また、自然と共に生きるという姿勢が大切だと思うのです。自然のものが、自然のまま存在していたのでは、原料になりえないわけです。人間の智慧によって、効能のあるものに作り変えていく。植物の花、根っこ、茎・・・何を利用するのか、それをグツグツ煮るのか、灰にするのか、太陽にあてておくのか、どういうふうに処理すればよいのか、そういうことを研究するのは、自然が人間に与えてくれるものを導き出そうとすることであり、人間と自然が一緒に生きる道だと思うのです。
人間が適切な処置を行なえば、植物がハーブ(薬草)になる。そういった意味で、ハーブ作りは人間と自然との共同作業だと思うのです。自然は植物を与えてくれる。人間は、それを、いかに適したものに作り変えていくか。自然の恵みを利用して、人間に活用するといった一連のプロセスこそが、人間と自然が共に生きるあり方だと思います。
木村: なるほど。栽培することで、自然のサイクルを壊さず、自然と人間の良い関係が生まれるということなのですね。自然が与えてくれたものを、どう利用するのか、試行錯誤の中で生み出された工夫が、自然のパワーをより一層引き出すことにつながるわけですね。
野中博士のお考えになる美しさとはどういったものでしょうか。
野中博士: 20代には20代の、50代には50代の美しさがあります。自分にあった美しさを引き出すことが、大事です。私は、60歳の肌で40の肌にするというのは、言語道断だと思います。逆に、40歳の方で60歳の肌を持っているといったケースもあり、その場合は、不摂生な生活が考えられます。
年齢相応の美しさを取り戻すには、精神的なトリートメントが必要になるかもしれません。「ストレス」、「酒」、「たばこ」、「自堕落な生活」・・・こういった、いわば美と相反するものがあれば、いかに品質の良い化粧品を使っていても、美しさから遠ざかってしまいます。
しかし、ストレスを防ぐには、仕事をやめなくてはなりませんよね?そして、仕事をやめようとすると、そのジレンマがストレスのもとになる。つまり、ストレスのない生活はありえないわけです。そこで、大切になってくるのが、”切り替え”なのです。これから、2時間は仕事をする、次の2時間は、心身ともにリラックスできるように、きっちり休むとかね。ある程度の切り替えができることが大切だと思います。
上手に気持ちを切り替えるために瞑想があったり、ヨガがあったり・・・。自然化粧品が、人に癒しとしてサポートできるのは、ほんの一分野であると思いますが、その人本来の美しさを取り戻すためのお手伝いができれば・・・・というのが、ヴェレダの考え方です。
ヴェレダのサロンで、1時間でも2時間でもリラックスできれば、その人の美しさが、内面からにじみでてくるはずです。内面の美を導くのが、ナチュラル化粧品の役割だと考えています。
ナチュラル化粧品には、太陽のエネルギーや自然のエッセンスが入ってます。それは、機械では測り知れないもの。他のケミカル商品ではないような、あるいは忘れられているものを与えることができると思うのです。私はなにも、合成化粧品が悪いと言うつもりはないのですが、自然が持つ力を必要としている肌が多くあるのではないだろうか、とくに現代は自然の良さが忘れ去られているのではないかと。
”美”は、誰もが必ず持っているものだと思います。そういう意味で、”美”は”個性”だと思います。100人100様の異なった肌質があるように、誰もがオリジナルな美を出していく可能性があるわけです。それを活かさないとね。
少々肌のキメが荒くても、ファンデーションでそれを隠そうとするよりは、与えられた条件の中で、いかに美しく見せるか、そういう姿勢が一番大事だと思うのです。ヴェレダの商品には、メイクアップ用品が一切ないのですが、なぜかといいますと、メイクアップをすることによって、誰もが同じようなひとつの美を目指すことになるからです。それよりは、100人100様の地肌を生かしたほうがいい。おのおのが持っている美しさを引き出すことが大切だと思うのです。
木村: 個性を自信を持って表現していくことこそが、美につながるということなのですね。博士、どうしたら、自信が持てるようになるのでしょう?(笑)
野中博士: 日本の場合は、ひとりが、どこそこの何番のファンデーションがいいというと、それにみんながどーーといっちゃうでしょう?(笑)そうすると、全員が同じになってしまう。それでは、つまらないと思うのです。もっと、オリジナルなものを大切にし、自分だけの美を探さないとね。
さらに、日本人女性の肌は世界でもトップレベルだと思うのです。肌のキメがものすごく細かく、丈夫。素晴らしい肌だと思います。例えばドイツ人の場合ですと、日本人の肌に比べると、毛穴も大きく、弾力性もありません。30歳を超えると急激に衰えてきますし、40歳になると、首のあたりなどがかなり目立つようになります。その点、日本人の肌は、ハリや弾力性があって美しい。もっと自信を持っているべきだと思うのです。
湿気の多い日本の気候が、肌に良い影響を与えているのだと思います。日本人の女性の肌は、敏感肌、乾燥肌といっても、ドイツの場合とは比べ物にならないほど状態が良いと思います。唯一の天敵は、”エアコン”でしょう(笑)エアコンの効いたオフィスに長時間いる場合は注意が必要です。もともと良い肌を持っているのですから、自信を持って、オリジナルな美しさを追求して欲しいですね。 |